仙台高等裁判所 昭和28年(う)428号 判決
(イ) 被告人は原審相被告人坂本文明と共謀し大規模な酒類の密造を企図し原判示摘示の期間、同一場所でしかも同一の製造方法により繰り返し合成清酒を製造したことが認められるのであるから、製造回数の如何に拘らずその全体を包括的に観て単一の犯罪として処分すべきであり、製造の各日時・数量を必ずしも特定判示する必要があるものでないことは論なく、従つて原判決が罪となるべき事実を特定していない違法があるとはいい得ない。
(ロ) 被告人は………継続して無免許酒類製造を為していたところ、昭和二十七年十一月十日頃に至り発覚の気配を察知し、右製造のため仕入れた原料及びその残品や、製造に使用していた機械・器具並びに容器などの大部分を数カ所に分散隠匿したことが認められる。
右の段階において、これら残原料・機具を以つてする合成酒密造の準備罪を認定せんがためには、被告人らが従来継続した密造の犯意を抛棄した形跡がないという消極的な事実のみでは足らず、将来密造を実行しようとする意思のあつたことを確認するにたる証拠を必要とするものと解すべきところ……によれば、被告人らはその頃、犯行発覚の気配を察知し、犯跡を隠匿せんがため前叙の如く物件の大部分を他に分散隠匿したもので、それ迄約五カ月に亘つてつづけた原判示第一の犯行を断念中止したものであることが窺われる。果して然りとせば、原判示第二の日時には被告人らはもはや密造の犯意を有しなかつたのであるから、判示の如き準備罪は成立の余地がないものと謂わねばならぬ。